石柱の庇護を受けた蒼い
月の門
を通り
例外たる招かれざるものが現れた
元より人としての
形
をして
元より人としての尊厳を持ち
石柱の祝福を受けた紅い
月の門
を通り
正当たる約束されしものは現れる
元の人とは異なる
形
をし
元の人とはほど遠い意思を持ち
ありとあらゆる欲の河が
枝分かれする以前に欲するものを本能とするのなら
善悪の区別なく
隔
たりなく
無為
に混じるが
故
引き剥がすこと叶わず
罪はなく 徳はなく 背徳でなく 善行でない
一つであり全てである願いを叶えるためだけに脈動す
「私は人になりたい」
(人は素晴らしいから)
「私は人でありたい」
(元は人であったのだから)
紅い
月の門
の先に待つのは
名状し難い姿の
存在感
蒼い
月の門
の先にあるのは
何ら変わらぬ人の姿であると言うのに
「私は人になりたい」
「その願いこそ罪なのだ」
「私は人でありたい」
「その姿こそ罰なのだ」
約束されたものが門を潜る時
招かれざるものも門を潜る
世界に二つが現れた後
やがて二つは一になる
蠢
くように定まらない紅い月
佇
むように完成された蒼い月
紅を目にした蒼はしかし
他の何にそれを伝えることなく
他の誰にそれを遺すことなく
やがて蒼は紅になる
そして紅は蒼に近付く
一つが一つを飲み込んで
二つが一つとなっていく
「私は人になりたい」
(蒼い
援助
を身に受けて)
「私は人でありたい」
(蒼の
魂滴
を飲み込んで)
いずれ白い
月の門
が開き
いずれ中身がやって来る
蒼い形を取り込んで
白い心を宿すなら
紅は人へとなるだろう
そうしてこの世界は成り立っている
そうして訪れるものは成り立っている
されど彼らは
彼方
にいる彼の
写し身
此方
にいるのは
分け身
実物を
模
った
似せ者
真実を知らぬ
作り者
やがて幻想が
潰
えれば
夢が覚めた後の一瞬の記憶を残し
全て消え行く定めである
真似た世界
端
から命はなく
元から存在していない
――――
“黒く塗りつぶされた”
Nameless
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