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あしたのお嬢



 それは闘いと言うにはあまりにも一方的であった。
 デーモンはありったけの力をこめて女を殴る殴る殴る。
 女はピクリともしない。
 それでもデーモンは殴るのをやめない。

 もう終わりか? パンチに疲れが見えてるぞ

 デーモンは驚愕した。
 何故人間がこんな耐久力を持ってるのか。

 次の瞬間デーモンは更に驚愕した
 女の体から赤いデーモンが分離して襲い掛かってきたのだ
 その赤いデーモンは猛烈にパンチのラッシュを仕掛けてきた

 こ、この技は俺のだ…
 この顔は俺と同じ…
 こいつ、まさか俺自身!?

 てめーの技で死ぬがいい、ブラッドオース・フィナーレ!

 自身よりも数倍に膨れた分身の攻撃に身をさらしデーモンは死んだ。
 こ、これが噂のカウンター女戦士の実力…手をだすんじゃなかった グフッ。

 ちぃとてこずっちまったな

 女は鞄のポーションのボトルを開けた。

 あぶねぇ、最後の一本じゃねぇか。
 しかも、なんだ? いつもよりも多く回復しやがる。
 補充ついでに文句言ってやる。

 女はデーモンからのルートもそこそこに、行きつけのアルケミーショップに急いだ。

 おう、オヤジいねぇのか? 店番も置かずにどこ行きやがった?
 ん?工房の扉が開いてるな、入るぞ。
 そこには少年が一人秘薬を抱えたままひっくり返っていた。
 どうやら扉を蹴破って入ってきた女にビックリしたらしい。

 おい、ジジイはいないのか?

 プルップルッ

 どれくらいで戻ってくるのだ?

 プルップルルッ

 女がいくら問いただしても少年は口をもごもごハッキリしない。

 何だてめーは店番もろくにできねぇのか?
 俺はてめーみてーなとろくせぇハッキリしない男は大嫌いなん…
 女がそう言いかけたときに奥のほうから大きな声がした。

 おおーいミスト見にこいや!無事に出産成功だ!しかも大ききいぞ!名前も決めた!
 ウン子ちゃんだ!

 そう言いながらトイレから出てきたのはアゴヒゲを蓄えた初老の男だった。

 お、ジョーきてたのか。
 老人は女に向かって言った、女は老人にポーションの件を話した。
 回復量が安定しないのでは安心して使えない。
 相手の攻撃に身を晒すカウンター戦士はポーションこそが命綱なのだからと。
 すると老人は

 実は俺はもう引退していてね
 お前さんが最後の1本に買っていったのは、ほれ、そこでひっくり返ってる弟子のアルケミストのミストが作ったものだ。
 こいつは才能があってな人見知りは激しいが今では俺を上回るポーションを作れんだぞ。
 俺はミストをじっと睨み付けた

 プルップルッ

 …こんな奴の作った薬に命をかけろってのか?
 この店には長らく世話になったよそを探すよ。

 ジョーが立ち去ろうとすると、

 バラヨッシャーンョ

 窓ガラスが割れる音がしてスケルトンが飛び込んできたのだ。
 狭い店の中に溢れる骨達。

 カウンター一閃で倒すジョー
 しかし数が多すぎる。

 ギョエーやられたー

 奥のほうでオヤジの断末魔が響き渡り、引きちぎられた五体が飛び散るのが見えた。

 クッまたしても守れなかった。

 ジョーが意味深な言葉を発すると同時に爆発音が響き渡った。
 スケルトンはその爆発で全て吹き飛んだ。

 許さんぞ貴様等…

 爆発がした方向から男が歩いてきた。

 まさかミスト!?
 ジョーは驚いた。
 少年らしさがまるで消えて、背も少し伸びたようだ。
 怒りが人を成長させたのだ。
 しかも、ジョーを避けスケルトンを倒すだけのポーションの配合と配置
 なんという才能、天才だ。

 なんて考えてるジョーの目前にいつの間にかミストが立っていた。
 そしてそれは突然であった。

 ズブッチュンパァッ

 ミストがジョーにキッスを仕掛けてきたのだ。

 ジョーはミストの急な行動に硬直し過去の記憶が走馬灯のように流れた。

 恋人いるかって? 馬鹿言え、こんな傷だらけの女に惚れる馬鹿はいねぇよ。
 何? この闘いが終わったら言いたい事がある?

 そうだ小さな丘の上に小さな家を建てて一緒に住もう…だから死ぬなあ!

 ジョーはハッと目を覚ました。
 何故今昔の事を…。

 既にミストは離れていた。そして、

 最初にあなたがこの店に訪れた時から好きでした愛してる。
 さようなら。

 ミストは脱兎のごとく去っていった。

 ジョーの口の中にはいつの間にか飴玉が入っていた。
 ボリボリと噛み砕くと中に手紙が入っていた。

「この飴玉を舐め終り手紙を読んでる頃には俺の命はもう無いでしょう……」

 ジョーが遠目で見ると橋の上を走るミストがまだ見える。

 手紙にはミストの先祖からのスケルトン一族との因縁と禁断の薬をめぐる争いについて書かれてあり、それに決着をつけるべく単独でスケルトンのアジトに乗り込むと書かれてあった。

 あぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあああああ

 あのヤローぉぉぉぉっっ
 こここっこの俺にとんでもない事しやがって
 しかも俺の返事を待たずに死ぬ、だ?

 カウンター戦士が何のお返しもできずに終わる?

『否』

 てめーが俺にやった事は何倍にしても返してやる。
 覚悟しとけよ。

 ジョーは走った。愛のためでもなく、人のためでもなく、過去の清算でもなく、俺はカウンター女。
 待つ事しかできない女。
 しかし受けた借りは必ず返す。
 己の信念を貫く為に。


 ミストの姿はもう見えない、だが場所は分かる。
 デルシアの遥か北「死の町」だ。

 いた、ミストだ。

 スケルトンに囲まれている。
 だが様子がおかしい。

スケルトン「俺達と取引をする為に師匠まで殺すとは人間とは思えぬ悪よのミストさんよ、いや本名はメガネだったかな」

メガネ「ちょっと待ってくださいよ本名は言わないでって約束でしょ。それよりも不死の秘密を早く」

ジョー「愛は終わった」

 その後メガネを殺したジョーを見たものは居なかった

 

The End

 

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