目次へ

ポリシー



 この世に生きる全ての人に問う。
 あなたにこだわりはあるだろうか。

 人、物、行為、なんでもいい。
 こだわりはあるだろうか。

 ここで語るのはこだわりを持つ男達の話。
 唯一つ譲れない物を持つ男達の話。

*** 色にこだわる男 ***

 男は身につけるもの全てをある色に染めていた。
 この色でなければ自分ではない。
 服も装備も髪までも、足の先から頭の先まで染めているのは赤。
 それも血のような濃い赤。
 遠くから見れば男をブラッドエレメンタルと間違う人もいるとかいないとか。

 男はバッグの中の持ち物にも赤にこだわった。
 武器はBerserker's Maul、ルーンブックも全て赤に染めていた。
 服は報酬布のDark Redで作り、装備は全てBerserker's Maul Redで染めていた。
 彼は戦士だったが、Scrapper's Compendiumを持ち、ブラッドウッドで作った椅子とテーブルを常備していた。
 もちろん理由は"赤い"からである。
 必要かどうかが問題ではない。
 それが赤いかどうかが問題なのだ。

 ある日男はCrimson Cinctureを手に入れようと考えた。
 手に入れるには強大なモンスターを倒さなければいけないと聞く。
 男はPrism of Lightに場所を絞ることにした。
 この時ばかりはBerserker's Maulだけで勝つことはできぬ。
 血色に染めた武器で最終の場所、ボスエリアに到達したのだ。

 彼は強かった。
 初挑戦でもスムーズにダメージを与えていく。
 時には危険な場面もあったが、そこは上手く立ち回り、自分を優位に持っていった。
 Shimmering Effusionの動きがだんだんと鈍くなりもう少しで倒せそうという時、男は勝てると思ってしまった。
 少し気が緩んでしまったのだ。一瞬の隙が仇となる。
 彼は倒れてしまった。
 しかし、そのいざという時を考えてPrism of Lightにしたのだ。
 隣部屋のアンクで復活し、焦らず立て直そうと思ったとき、男はやってはいけないミスに気付いた。

 復活してまず最初にすることはなにか。
 装備を身につけることか?
 包帯を巻くことか?

 男は違う。
 男がまず最初にすることは、着ているローブを赤く染めることだった。
 なによりも赤くないものを着てることに我慢ができなかったのだ。
 しかし、彼はミスを侵してしまった。

 染めタブを忘れてしまったのだ。

 その瞬間男はどうしたか。
 自分の荷物の回収もせずに、染めタブを買いに外に出てしまったのだ。
 色にこだわるあまりに普通ではやらない間違いを侵してしまったのだ。
 ニュジェルムに着き、染めタブを買ってからそのことに気付いた男は、その場で呆然と立ち尽くしたという。

*** *** *** *** ***

 

*** Platemailにこだわる男 ***

 その男は毎日イルシェナーにあるソーサラーズに足を運んでいた。
 彼を見るのは決まってLv.1からLv.2にかけた階段手前のところ。
 男は手にハープを持ち異様な調べを奏でながら、その不調和音で弱まったブラッドエレメンタルを弓で射っては倒していた。
 さらさらなオリーブ色の長髪と持ち前のハープの腕前、細身の身体で遠くから射る弓のおかげで汗臭い戦士の印象は全くなく、一部の女からは大人気。
 道端でハープを奏でれば女は皆立ち止まり、ビーチに泳ぎに行けばその鍛えられた肉体を見に女達が過激な格好で群がってくる。
 女には全く不自由しなかった。
 おかげで一部の男たちからは"軟派野郎"と罵られていた。
 しかし、本人はおかまいなし。
 今日もいつもの場所でいつものようにブラッドエレメンタルを狩る。

 男には意中の女がいた。
 出会いはこれもソーサラーズ。
 階下から声が聞こえ、いつもは行かないLv.2を見に行ってみると、勇ましい声をあげ同じくブラッドエレメンタルに剣を振るう女がいたのだ。
 短く揃えた銀髪が彼女によく似合う。
 黒く染めたPlatemail TunicにPlatemail Leggings、全身をPlatemailに包んだ男勝りな格好が彼女の性を逆に強調する。

 まさに、男の一目惚れ。

 彼女は1人で各地のモンスターを狩る、剣術に長けた戦士だった。
 腕に自信がある彼女は彼のさりげないハープでのサポートを耳障りだと一蹴し、自分がいる間は降りてくるなと彼に命令する。
 彼女に会いたいが怒られ嫌われるのは嫌だ。
 階段上からそっと彼女の勇ましい声に耳を傾ける日々。

 ある日、彼女が珍しく彼の元に来た。
「これ、どうだ。かっこいいだろう」
 彼女はViolet Courageを手に入れたのだ。
 すでに着替えて見せたそれは彼女の体のラインにぴったり合い、以前に手に入れていたレザースカートと合わせれば、勇ましさの中にかわいらしさも兼ね備えた女性に見える。

 彼女も好きで男のような格好をしていたわけではない。
 性能の良い防具が手に入ればすぐにでもTunicやLeggingsは脱ぐつもりであった。
 彼女もまた男に好意を持っていた。
 命を守るためとは言え、性能優先の格好をしていた自分が女を捨てていると思え、そんな姿を男に見せたくなく階下に下りてくるなと言っていたのだ。

 彼女は今日決めるつもりであった。
 今日男に言うつもりであった。
 今までに見せたことのない笑顔で微笑んだ時、男から耳の疑うような言葉を聞いた。

「嘆かわしい」

 一言そう言うと、さっき取ったばかりのHeart of the Lionを彼女に渡した。
「あなたにはPlatemail Tunicこそふさわしい。性能が気になるのならこちらにしておきなさい」
 男は女性らしい彼女に興味がなかったのだ。
 見た目も気にせず男性物のPlatemail Tunicに身を包んだ彼女こそ美しいと思っていたのだ。
 しかし彼女も女。
 好きな男の前では女性らしくありたいと思う気持ちを男は理解することができなかった。
 男は女性らしい彼女ではなく、Platemailに身を包んだ勇ましい女が好きだったのだ。
 その後、男と彼女の想いが通じ合ったという話は聞かない。

*** *** *** *** ***

 この世に生きる全ての人に問う。
 あなたにこだわりはあるだろうか。

 苦心して飾った花壇や、
 染めタブのあの色や
 いつもの挨拶の一言や
 バッグに忍ばせているあの本。

 あなたにこだわりはあるだろうか。
 私のこだわりはどこにあるのだろうか。

 

The End

 

目次へ

(C) Electronic Arts Inc. Electronic Arts, EA, EA GAMES, the EA GAMES logo,
Ultima, the UO logo and Britannia are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc.
in the U.S. and/or other countries. All rights reserved.

Copyright (c) 2007 Yamame All Right Reserved.

  inserted by FC2 system