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私結構強いのよ?



今日も今日とて寝ているところを無理やり叩き起こされ良い様に使われる。
まったく、私を一体誰だと思っているのだ。
大体掃除などというものは自分でするものではないのか?

『何か言った?聞こえなかったけども?』

「いいえ、何も」

まったく、地獄耳というか、こちらの考えを読み取るのが上手いというか、とんでもない女だ。

『そうそう、掃除が終わったら教えてね。後で一緒に行ってもらいたい所があるから。』

と、言うと女は奥の部屋へ引っ込んでしまう。
まだこき使う気か! 私を使用人か何かと勘違いしているのじゃないか? クソ女魔術師め!
いつか酷い目にあわせてやるから覚悟しておけ! とか何とか思いつつも
掃除を終わらせ終わったことを伝えに行く私は、ひょっとしたら「善人」という奴ではないだろうか?
と悩んでしまう。
「終わりました」
掃除が終わったことを伝えると

『あら、意外と早かったのね。じゃ、また後で呼び出すからそれまで休んでていいわ。』

と、のたまった。
やれやれと思い休んでいるとすぐにまた呼び出された。
場所はデスパイズ入口。
はは〜ん、なるほど。護衛をしろというのか。ま、私の力は本来
そういうことに向いているのだからな。
ま、私がいればエティンだろうがオーガだろうが恐れる必要は・・・。

『リザードマンを狩るわよ。ついて来て。』

はい? リザードマン? なんでリザードマンなんぞ

『今なんでリザードマンなんかって思った?』

……なんで解るんだ。

『いいわ、理由を教えてあげる。いい? リザードマンの皮はね、腰痛のときに腰に巻くコルセットを作るのにとても良いのよ。で、町のヒーラーさんに頼まれたから皮を取りに来たってわけ。納得いったかしら?』

納得いった訳ではないが、そういう事情であるならば仕方あるまい。
ま、精々頑張るがいい。
こちらとしては護衛のしがいも無いがな。
というか、リザードマン相手なら護衛など要らないのじゃないか?
そもそもこいつは高位の魔術師なわけだし。
デスパイズぐらいでは護衛など必要ないではないか? などと思っているうちにリザードマンの住む階層に着いた。
ふん、ま、頑張るがいい。と、思っているとクソ女魔術師はこう言い放った。

『じゃ、狩って来て。』

……はい?

『後、ちゃんと皮はなめして持ってきてね。』

いや、ちょっと……。

『あたしココで本を読んでるから、お願いね。』

と、言うと近くの岩に腰をかけて本を読み始めた。
いや、そーじゃないだろ! 私は護衛だぞ?
戦うだけならまだしも皮を剥いで、なめして、持って来いだと!?
んでお前はそこで本を読んでいるだと?
しかもなんだその本は!
[バックギャモン攻略法!! これさえ読めば貴方も一月でバックギャモンのグランドマスター!]だと?
なんなんだそれは!!
バックギャモンに攻略法などあるか!!!
しかも真面目に読んでるし! なにがふむふむだ、この大馬鹿め!
お前普段はもっと難しい魔術関係の本とか読んでるだろうが!!
なのになんで今読んでる本がインチキくさい本だということに気づかんのだ!大体お前は

『早く行って。』
「はい」

まったく、まったく、まったくぅぅぅう!!
こっこの、このやり場の無い怒りを如何してくれよう……。
このやり場の無い怒りは! このやり場の無い怒りは!! このやり場の無い怒りはぁ!!!
リザードマン! 貴様らが受けろおおぉぉぉ!

 

はぁ、勢い余って随分殺したな。で、皮を剥いで、なめして……。
くそっ、何で私が……。
あのクソ女、いつか殺してやる。

「終わりました。」
『あ、終わった?ちょっとまっててね〜。あと少しで読み終わるから……』

家で読め!!

『いや〜、んふふ。最近バックギャモンにはまっちゃってさぁ……』

知るか!早く読め!!

『貴方知ってる?バックギャモンて言うのはね……』

いいからもう早く読めよ! 私を誰だと思ってるんだ!! その程度の知識ぐらいはあるわ!!

『さて・・・。おしまいっと。じゃ〜出ましょうか、お腹もすいてきたしね』

外に出ると一頭のパックラマが居た。

『あ、ラマに皮積んでね』
「はい」

ラマに皮を積む。おい、ラマ、怯えるな。私はお前に対して怒っているのではないのだ。

『さ〜て、じゃ、帰りますか。今日はありがとね〜。あ、そうそう。また後で呼び出すからね?』

……まだ何かあるのか。もう今日は勘弁してくれ。疲れたんだよ、色々とな……。

『じゃ、また後でね。』

その後今度はまた自宅に呼び出された。
今度はなんだ……。

『呼び出したけれども今回は仕事じゃないのよ。ほら、今日は頑張ってくれたからさ? ま、お礼みたいなもんよ』

と、言うと女魔術師は私にパイを差し出した。

『アップルパイよ。私が作ったの。どうぞ、召し上がれ?』

私にこれを食えというのか?この私にか?
こんな物私は今まで一度も食したことなど無い。
それに私が食べるものといえば肉や……。

『食べて。』
「はい」

ええい!仕方が無い! 食べるとするか! クソッ!
む、まだ暖かいな。焼き立てか。ふん、サクサクと歯ざわりはまぁ良いな。
中に入っているリンゴも甘酸っぱくていい感じだ。
うん……うん……。美味い。美味いじゃないか! なんだこれは! 凄い美味いぞ!! これほどの物を今まで知らなかったとは……。
う〜ん、不覚だった。

『美味しかった?』
「はい」

『そ、良かった。じゃ、用事はこれでお仕舞いよ。帰っていいわよ。じゃあね。』

アップルパイ、美味であった……。
次回もまた食わせてもらえないだろうか。うん、食わせてもらいたい、もらいたいぞ。
アップルパイのためであったらもう少し働いてやっても良いと思う私はいやしいだろうか。しかし、あれは本当、美味であったなぁ。いつか殺す! と思っていたが、うん、まぁ、勘弁してやろうか。

『まさか本当に食べるとはねぇ……。もし、あれで[餌付け]が成功したとしたら……。アップルパイ目当てで働くようになったとしたら……。これは大発見よねぇ。なんせ魔術を使わずにデーモンを使役できるってことだものねぇ……。それにしても、アップルパイを美味しそうに食べるデーモンって……。んっふふふ。思い出しただけでも笑えるわ。さて、今度は何を食べさせてみようかしら……』

The End

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